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 それは給料後の金曜日の事だったんだけど、先輩から「今夜、飲みにいかねえか?」と誘われたのです。
30歳で、トレンディエンジェルの斉藤みたいに若ハゲの、いかにも女とは縁のないと言える先輩で、それなりに明るい性格なのが唯一の救いって感じの人だったんです。
「おごりですか?」
「給料後だからな、たまにはおごってやるか」
他人の金で酒が飲めると言うこともあって、若ハゲ先輩と一緒に居酒屋に行くことになりました。
さすがに金曜日の居酒屋だから、いつもよりも人が多く、ごった返していました。
こういった騒音の中で酒を飲み交わしというのは、何とも楽しいものがあります。
居酒屋の雰囲気は学生の頃から大好きだったし、大好きな生ビールをジョッキで煽るのは何よりも至福を感じていました。
仕事の疲れも吹き飛ぶような、そんな気持ちにもなってしまいます。
これで土日は仕事もなく、のんびりと過ごすこともできるという開放感。
さらに他人の金で酒を飲めるんだから最高でした。
これで相手が女だったらもっと良かったのに、そんなことまで考えたりもして。
「先輩、休日なにやってるんすか?」
いかにも非モテな先輩だから、彼女なんかいないだろうからデートなんかしていないと言うのは分りました。
きっと1人でシコシコやってるんだろうなって思ってたんです。
「今度の土日か、多分ラブホ」

こいつなにハッタリかましてるんだよ、最初そう思ったんです。
「冗談キツイっすね」
「いや、冗談じゃないよ。
マジで約束あるから」
真顔で言い返されてしまいました。
そんな若ハゲの先輩の顔を、じっと見つめてしまったのです。
もう酒に酔っぱらっちゃったのかこの人?なんて思っちゃったんですよね。
いくらなんだってこの人がラブホに行けるような相手がいるわけないって思ったんです。